インタビューは、2004年の10月にシカゴで行われた。
Q:昔と比べて現在の相場環境はどうでしょう?
A:10倍も難しくなった。
Q:それはなぜ?
A:15年、20年前と比べて、マーケットがドラマティックに変化しているからだ。
トレンドフォローの人間が増えたせいもある。
自分のしっぽを永遠に追い続けるようなゲームだね。
Q:システムトレーディングでは、予測は重要ではないはずですね?
A:何年も有効だったシステムから離れる時を考えれば、アイデアは常に重要だ。
未来では常に何か違ったことが起こる。そうでないならみんな大金持ちだ。
Q:他には?
A:ヘッジファンドだね。トレンドフォローのシステムを広く採用しているから。
それと、かなりな数のヘッジファンドはインサイダー情報で仕事をしている。
これはトレードですらない。
Q:つまり、従来のトレンドフォローは役に立たないと?
A:20年前に有効だったやり方が10あるとするとそのうち9つは、ほとんど役に立たない。
20-40のブレイクアウトシステムは、15年前までは有効だった。そこから精度が落ちてきた。
ジム・シモンズは毎年驚異的なリターンをたたきだすファンド「ルネッサンステクノロジーズ」の創始者。
ファンドマネージャーの報酬2500億円は、ヘッジファンド業界の最高報酬である。
クリス:これを見ていただけますか?ここにあるのは、ある商品(コモディティ)の価格の典型的なグラフです。
私ならこれを見ても「ただランダムに動いているだけだ。
上がったり下がったりで、この期間全体ではちょっと上昇基調みたいだけど」くらいしか言えません。
一体どうしてあなたは、これを見て、ランダムじゃないものを看破してトレードに活かすことができるんでしょうか?
ジム・シモンズ:これは昔のものでしょうかね。
このグラフは、商品や為替がトレンドを作りやすかった時代のものにみえます。
あなたが見て取ったような非常に僅かなトレンドだけでなく、もっと小さい区切りでもトレンドが見て取れます。
もし僕が、「よし、今日の値動きを予測してやろう。過去20日の移動平均の動きから予測できるからね」と言ったとします。
それは、いい予測であり得ますし、儲かるかもしれません。
実際、何年も昔には、そういうシステムも役に立ったのです。
見事に、というほどではないにしても、ともかく役には立った。
儲かって、損することもあるけど、また儲かる、といったふうに。
これは1年分の日数があるグラフですから、その期間では多少儲かるかもしれません。
ただ、これは今や有効性のほとんど残っていないやり方 vestigial
system(退化したシステム)です。
クリス:そこであなたは、幾通りもの長さのトレンドをテストしてみて、例えば10日間のトレンドとか、15日間のトレンドが価格予想に使えるかどうかを見てみる、ということでしょうか。
ジム・シモンズ:そうですね。そういうのを全部試してみて、何が一番うまくいくのかを見ます。
長期のトレンドフォロー〔相場の動いている方向へ順張りすること〕は60年代には大当たりでしたが、70年代にはまあまあで、80年代にはうまくいかなくなった。